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地層から学ぶ
大地の歴史

■地層から学ぶ大地の歴史ー火山と大地

地層から学ぶ大地の歴史3−1

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大田市には三瓶火山と大江高山火山の2つの火山があります。三瓶火山は約10万年前から約4000年前までの間に幾度か活動し、三瓶山を形づくりました。大江高山火山は三瓶火山より古く、概ね200万年前から70万年前に活動し、大江高山を最高峰とする火山の集まりを形成しました。その一角にある仙ノ山は石見銀山の中心で、銀鉱床の形成は火山によるものです。
大田市の象徴である三瓶山と石見銀山のいずれも火山に由来するものであり、これらを題材にすることで火山が少し身近に感じられるのではないでしょうか。

地層から学ぶ大地の歴史3−2

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火山は、地下にあったマグマが地表に出てくることでてできた地形です。火山が作る地形は山ばかりでなく、火口やカルデラの窪地のみが残される場合や、海底にあって海面上には見えないものもあります。
マグマとは岩石が高温で溶けたものです。地球内部は、深部の核の一部を除いて基本的に固体(岩石)でできていますが、上部マントルの一部で岩石が溶けてマグマが生成されます。マグマが生成される場所は、プレートの湧き出し部(太平洋の中央海嶺など)とプレートの沈み込み部(日本列島付近など)のほか、ホットスポットと呼ばれる場所(ハワイ島など)があります。マグマが生成される場所の上にある日本列島には多くの火山があり、世界有数の火山地帯です。

地層から学ぶ大地の歴史3−3

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「火山」として区分されるものは、基本的にはおよそ200万年前以内に噴火したものです。それより古いものでも火山地形が残っている場合は「第三紀火山」と呼ぶ場合があります。大田市では、海岸部を中心に約1500万年前頃の火山噴出物が多量に分布していますが、これらは火山地形が残っていません。
なお、三瓶山の北麓には「森田山火山」という約100万年前に活動した火山があり、三瓶火山とは別の火山に位置付けられています。したがって、厳密には「大田市には火山が3つある」とすべきですが、一般的には火山として認知されておらず、三瓶山の一部とも言える位置にあることから、このスライドでは触れないこととします。

地層から学ぶ大地の歴史3−4

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火山体のつくりを模式的に示した図です。三瓶火山や大江高山火山のように粘り気が強い溶岩によってできる「溶岩円頂丘(溶岩ドーム)」の形状をイメージした図です。小学校では習わない用語や内容が入っています。

地層から学ぶ大地の歴史3−5

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火山の活動は1回の噴火で終わる場合(単成火山という)もあるものの、活動期間が長いものは100万年以上にもわたって活動を繰り返します。そのため、歴史的な記録だけでは火山活動史の解明は困難で、火山噴出物の地層の調査によってその活動史が明らかにされます。

地層から学ぶ大地の歴史3−6

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ここでは、三瓶町志学の「志学展望広場」でみることができる地層をもとに三瓶火山の噴出物の地層を説明します。志学展望広場の崖には三瓶火山の複数時期の噴出物がコンパクトに重なった地層が露出しており、地層観察の適地です。

地層から学ぶ大地の歴史3−7

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画像から地層を区分することは難しいですが、この図のように傾いた地層が重なっていることは読み取ることができると思われます。図中では、画像ではわからない地層の特徴を示しています。

地層から学ぶ大地の歴史3−8

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地層のうち、火山噴出物の部分について拡大した画像を示しています。拡大画像中の数字は地層の画像に示した数字と対応します。この地層では三瓶火山の噴出物が4層観察できます。4層のうち、2層は2回の活動の噴出物が重なっており、この地層は5回分の活動の噴出物と非活動時の土壌が重なっていることになります。

地層から学ぶ大地の歴史3−9

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空高く放出された火山灰は遠方まで到達します。この画像は庄原市高野町の地層で、現在は尾道自動車道になっている部分です。画像では黒い層(黒色土壌)に挟まれた白い層がほぼ中央にあり、その上にも薄く途切れがちな白い層があります。また、黒い層の下に薄茶色の層があります。白い層と薄茶色の層が三瓶火山の噴出物です。中央の白い層は厚さ約20cm、下の薄茶色の層は200cm以上の厚さがあります。薄茶色の層は約1万6000年前の活動で放出された噴出物で、三瓶山以東の中国山地に広く分布しています。

地層から学ぶ大地の歴史3−10

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火山噴出物は、火山ごとに特徴があり、同じ火山でも活動の時期が違うとそれぞれ特徴があります。それを詳しく調べることで、別の場所にある火山灰の地層を比べることが可能です。
具体的には、中に含まれる鉱物の種類や火山ガラスの化学組成などを調べて、その特徴を比較します。三瓶火山の噴出物の場合、鉱物では斜長石、角閃石、黒雲母、磁鉄鉱を多く含みます。
三瓶火山の噴出物に挟まれた黒色土壌から火山灰の粒子を洗い出して、九州南方の海中で生じた約7300年前の巨大噴火の噴出物(鬼界アカホヤ火山灰)が堆積した層を特定したという研究もあり、条件さえよければ数粒の粒子から供給源の火山を特定できることもあります。

地層から学ぶ大地の歴史3−11

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火山灰を詳しく調べることで、三瓶町志学の地層と庄原市高野町の地層を比較することができました。この方法によって、1カ所の地層だけではわからない活動の歴史を明らかにすることができます。

地層から学ぶ大地の歴史3−12

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この図には、それぞれの噴出物の年代を示しています。噴出物の年代は地層の情報だけでは知ることができませんが、放射性炭素法などで年代測定するなどして明らかになります。

地層から学ぶ大地の歴史3−13

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三瓶火山の活動の歴史を地層の積みかさなりのイメージで示しています。三瓶火山は約10万年前に活動を始め、約4000前までに7回の活動期があったことが明らかになっています。活動が始まると、数年にわたって活動し、その間に幾度かの噴火を行うことが多いようです。
三瓶火山の活動は、約10万年前と約5万年前には「巨大噴火」に相当する大規模な噴火を伴っています。約5万年前の噴出物は大田市の市街地にも10〜15mの厚さで分布しており、各所でその地層が露出した崖を見ることができます。巨大噴火では長径約5kmにも達するカルデラ(陥没火口)が形成されており、その段階では現在の山体は存在していません。現在の山体は約1万9000年前以降にできたものです。

地層から学ぶ大地の歴史3−14

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以下、3点の図では三瓶火山の地形変化を模式的に示しています。三瓶火山の活動は、低山が連なる場所で突然始まりました。

地層から学ぶ大地の歴史3−15

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約10万年前と約5万年前の活動は巨大噴火を行い、カルデラが形成されました。カルデラ湖になっていた時期もあったと想像されます。

地層から学ぶ大地の歴史3−16

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約1万9000年前の活動では、爆発的な大噴火とともに、ゆっくりと溶岩を噴出する活動も行なっています。その溶岩は孫三瓶山の南側にある日影山を作っています。この山が三瓶山では最も古い峰で、その他の峰は縄文時代の2回の活動(約5500年前と約4000年前)に形成されました。

地層から学ぶ大地の歴史3−17

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三瓶山の峰はカルデラの内側で噴出した溶岩でできています。カルデラの範囲は山裾の外側を取り囲んでいます。起伏がわかる地形図(例えば地理院地図での起伏表示やグーグルアースでの立体表示)で三瓶山を見ると、カルデラの範囲がよくわかります。この画像では男三瓶山(左の高い峰)とその右の子三瓶山の間に西の原が見えてます。西の原などの緩やかな斜面は、カルデラの内側です。

地層から学ぶ大地の歴史3−18

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過去1万年間の堆積物で構成された平坦な地形を沖積平野と呼び、静間川と三瓶川の下流域広がる平野がこれにあたります。三瓶火山は1万年前以降に2回の活動期があり、その噴出物は平野の地形発達に大きな影響を与えています。
これらの平野は、その大部分が三瓶火山の噴出物でできています。火砕流や土石流として河川に供給された土砂がさらに下流に運ばれ、急速に堆積します。同様の現象は、神戸川下流の出雲平野でも生じたことが明らかになっています。

地層から学ぶ大地の歴史3−19

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三瓶山を流域に持つ川は3水系あり、いずれの川も噴火による土砂の影響を大きく受けました。特に静間川(三瓶川)と神戸川の下流では火山活動時に平野の急激な拡大が生じ、現在に至る地形の原型が完成されました。

※3水系は、静間川水系(三瓶川を含む)、神戸川水系、江の川水系。神戸川は斐伊川放水路によって行政的には「斐伊川水系」だが混乱を避けるためにあえて神戸川水系と呼びます。

地層から学ぶ大地の歴史3−20

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大江高山火山は三瓶火山よりも大きな規模を持ち、最高峰の大江高山をはじめ、溶岩でできた峰が30峰以上あります。これを総称して大江高山火山と呼びます。「火山群」とする場合もありますが、峰々がほぼひと続きであることから、ひとつの火山という解釈になっています。

地層から学ぶ大地の歴史3−21

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大江高山火山は大田市の西部にあり、標高300m前後を上限とするなだらかな「石見高原」の中に多数の溶岩円頂丘が集まる様子が印象的な地形です。

地層から学ぶ大地の歴史3−22

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火山礫と火山灰が堆積して形成された火山砕屑丘の仙ノ山は周囲の溶岩円頂丘に比べてなだらかな形状です。写真は大田市仁摩町の沖から撮影しています。石見銀山の発見伝承では、博多商人の神谷寿貞が沖をゆく船から仙ノ山を見て銀鉱床を発見したと伝わります。

地層から学ぶ大地の歴史3−23

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国内最大級の火山砕屑丘である仙ノ山で鉱床を作る熱水活動が生じ、他に例をみない特殊な鉱床が形成されました。上の図はデフォルメしたものですが、土砂状の火山噴出物に銀などの成分を溶かした地下水が染み込んだことで独特の鉱床が形成されてました。

地層から学ぶ大地の歴史3−25

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「福石」と呼ばれた石見銀山の特徴的な鉱石。肉眼的には銀を含む石のように見えないが、この石で1トン当たり400gの銀を含んでいます。一般的な銀鉱石は石英の脈にともなうことが多いが、火山砕屑丘が鉱化(熱水などによって有用鉱物が生成される作用)を受けた仙ノ山ならではの珍しいタイプの鉱石です。この鉱石は、大正時代に大久保間歩の坑内で採取されたもので、大森鉱山(石見銀山)が稼働している時期にとられた数少ない福石のひとつです。

地層から学ぶ大地の歴史3−24

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大久保間歩は福石を産する「福石鉱床」にあります。江戸時代に開発された坑道で、広い地下空間を持つことが特徴的です。

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