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地層から学ぶ
大地の歴史

■波根湖堆積層の年縞

1994年に島根大学により波根湖干拓地で実施されたボーリングでは、旧波根湖湖底の堆積層に明瞭な縞模様が確認されました。
この縞模様は、湖底に堆積した泥が乱されることなく整然と堆積し続けたことで残されたものです。下の画像は、ボーリング試料のX線写真で、白い層は大半がプランクトンの遺骸からなり、黒い層は粘土粒子です。
縞模様はかなり規則的に繰り返されていて、白い層は夏期の高温、渇水期にプランクトンの相対量が圧倒的に多くなった層、黒い層がその他の季節に相当するとみられます。洪水などのイベントにより夏期に粘土粒子が多量供給されることも考えられ、1層が正確に1年を示すとは限りませんが、概ね気候周期を反映したものと考えられ「年縞」と呼ばれます。


年稿の存在は、それが形成された時代の波根湖では海水と淡水が成層し、低層の水が貧〜無酸素状態だったことを示します。
年稿が形成されたのは5000年前から9000年前頃です。当時、波根湖は水深が10m以上ありました。そこに海水が入り込むと密度差によって淡水と海水が成層します。静かな条件では、重なり合った淡水と海水はほとんど混じりあいません。
狭い波根湖では大きな波は起きないため、淡水の下に入り込んだ海水が攪拌されることがなく、低層付近は酸素をほとんど含まない水になります。そのため、底にたまった泥がかき乱されることなく静かにたまり続けるのです。


下の画像の下部には2cm程度の厚さで黒い層がみられます。この部分は約7300年前に九州南海中の「鬼界火山」が大噴火した際に噴出された火山灰、「鬼界アカホヤ火山灰」の地層です。


波根湖ボーリングのX線画像

波根湖ボーリングのX線画像。地表からの深さ18.2〜18.4mの区間の試料。ボーリング試料を厚さ1cmにスライスし、X線で撮影したもので、実際の大きさは上下の長さ20cm。

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