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地層から学ぶ
大田市の大地

石見鉱山関連資料 概況(石見鉱山株式会社 石見鉱業所)

1 位置及び交通

石見鉱山図版

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石見鉱山図版

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2 沿革

大正8年 松江の人、水藤嘉吉が五十猛鉱山として登録し重晶石を採掘。

昭和26年末 日満鉱業(株)が鉱業権を取得して探鉱を行い黒鉱鉱床、石こう鉱床を発見。

昭和30年1月 三井金属鉱業(株)が全鉱区を日満社から買収。昭和37年6月末まで日満社が石こうを採掘し千原社が地表試錐で黒鉱鉱床を探鉱。

昭和37年7月 石見鉱山(株)を設立し石こうの営業、黒鉱の探鉱を継承。

昭和41年12月 黒鉱の試験操業を20t/日の規模で開始。その後、探鉱の進展と共に急激に黒鉱獲得鉱量増加し、70t/日→95t/日→115t/日→160t/日と増産起業を行う。

昭和44年2月 大宝鉱業(株)より鵜峠鉱山(大社町在)を買収し、黒鉱及び銅鉱、ならびに石こう探鉱を実施。

昭和44年8月 大阪石膏(株)より全鉱区を買収、松代坑の操業合理化を行うとともに、延里鉱区の探鉱を実施。

昭和45年1月 延里鉱区において斜坑による坑道探鉱を開始し、延里鉱山の開発に着手した。(黒鉱、石こうの探鉱、開発)

昭和45年10月 大田鉱山(株)を買収。特にこの買収は地域社会の要望に則って実施したものなので、これにより大田市の鉱山は当社が一手に引き受けることとなり、鉱業政策上も単一化された。

昭和46年4月 組織改編により事業部静的運営とする。即ち、黒鉱部門を石見鉱山、石こう部門を延里鉱山と称す。

昭和46年6月 石見鉱山において選鉱系統に銅精鉱採取を新たに加え製品化した。

昭和46年9月 石見鉱山においては、黒鉱160t/日処理を継続し、黒鉱の基幹探鉱として-90L(現在開発中の最下底レベル)から斜坑掘下りによる-120Lまでの探鉱を実施した。 採鉱関係も新採鉱法の適用(cut&fill)、新さく岩機、ならびに積込機の導入により合理化され、逐次その成果を挙げている。
近々、北坑斜坑運搬の合理化起業が完成した。
延里鉱山においては、45年1月に斜坑探鉱開始以来、僅かの日時で現在天然石こうの採鉱5,000t/月の規模が完成した。
坑内の採鉱計画も斬新なものであり、トラックレス方式の採用、リモコンによる主要運搬などで旧に数倍する能率である。又、黒鉱探鉱も併行して積極的に実施している。

昭和47年12月 石見鉱山-105m準、西部鉱体群に対して探鉱開始し4鉱体を捕捉した。

昭和48年9月 石見鉱山-105m準、東部鉱床群に対して探鉱開始する。

昭和49年4月 延里鉱山北西部および南東部の石こう探鉱を開始する。

昭和49年5月 石見鉱山は直径400mの筒状噴火口角礫帯に発達している黒鉱上部に石こう鉱床が存在し、黒鉱を東部および西部鉱床群に大別している。これまでは噴火口角礫帯の北側のみに探鉱が集中し、石こう鉱床分布範囲の大きい南側に地表試錐の一部や電探によって鉱床賦存の示徴が得られているので、坑内試錐で南部方面の探鉱を開始した。


3 操業現況

1)石見鉱山(黒鉱)

イ 粗鉱品位 自山鉱 Cu 0.52% Pb 1.38% Zn 5.83% (160t/日)
(49年予算)

ロ 年間処理量 自山鉱 48,300t (49年予算)

ハ 製品種別及び販売先
銅精鉱(Cu 25~28%、Pb 5〜8%、Zn 5〜8%)三井金属鉱業 日比製錬所
混合精鉱(Cu 5~7%、Pb 25〜30%、Zn 20〜22%)三井金属鉱業 八戸製錬所
亜鉛精鉱(Cu - 、Pb - 、Zn 50~52%)三井金属鉱業 三池製錬所
  *混合精鉱はAu、Agを含む


2)延里鉱山(石こう)

イ 生産量 年間 36,000t

ロ 製品種別及び販売先 SO3 32%  昭和社経由 各セメント会社へ


3)人員構成(49年7月末)<省略>


4 地質概況

1.一般地質構造

いわゆる西日本外帯の火山活動によって発達した新第三紀中新世に属する火山岩、堆積岩類で構成される。上部より模式的に延べれば次の通りである。


2.鉱床

1)石見鉱床

イ)鉱床は上記の中、週として久利、川合層の流紋岩類を鉱対して発達した不規則塊状の黒鉱式鉱床で、石こうを随伴する。石見鉱床を始めとし鬼村、延里、松代を含めて北島根地区での石見鉱床群を形作っている。

ロ)石見鉱床は盆状構造を呈する黒色頁岩を直接帽岩とし、平行に発達する上部鉱体と不規則塊状に発達する下部鉱体とに別けられる。石こう鉱体は黒鉱鉱体に包まれて黒色頁岩底面に累々平行して賦存する。

ハ)これらの鉱床は東西及び南北にそれぞれ約300mに広がり黒色頁岩の下部約100mに亘って存在し、海抜準+20m〜-120m間に賦存する。

二)鉱石は粘土鉱、珪化鉱、石こうに区別される。 粘土鉱は頁岩底部及び周辺部に存在し、塊状の黒鉱が重晶石を伴って粘土中に含まれるもので、一般に高品位である。珪化鉱は珪化作用の著しい鉱石で、黄鉱、珪鉱よりなり本鉱床の大部分を占める。 鉱石鉱物は方鉛鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱、黄鉄鉱を主とする。 石こうは主として雪花石こうが発達し、鉱体の周辺部は繊維石こうとなる。


2)延里・松代鉱床

イ)延里・松代鉱床は石見鉱床同様盆状構造を呈する。 黒色頁岩層を直接帽岩とし、久利層の砂質頁岩及び角礫凝灰岩の一部を交代して生成した石こう鉱床及び層状黒鉱鉱床が胚胎される。 又本地区西部には鉱化作用をもたらしたと考えられる流紋岩(波多層)が南北に連続し、下部網状黒鉱鉱床(石見型)の賦存が考えられる。

ロ)黒鉱鉱床は延里地区で実施した下向試錐(SI-5号)で石こう鉱床層準下部で顕著な銅、鉛、亜鉛の鉱兆を把握しており、又松代石こう鉱床の上下盤にも鉱品位の黒鉱が散見され、西方には流紋岩の分布も明らかである。 これらの事から本地区は層状黒鉱及び石見型網状黒鉱鉱床の存在が大いに期待される地域である。

ハ)石こう鉱床は久利層の変質凝灰岩中に胚胎される不定形塊状鉱床で、延里、松代鉱床ともに同一層準に存在する。両鉱床間はまだ未探鉱で今後の探鉱により、この間及び周辺にも石こう鉱床存在の期待が大いにもてる。

石見鉱山図版
石見鉱山図版

5 地質調査ならびに探鉱の概況

昭和27年より各種の方法により調査、探鉱を進めてきたが、主なるものは次の通りである。

1)地表調査 30年〜36年 石見、延里、松代鉱区内全域

2)電気探鉱 30年 石見現鉱床北部、西部(SP法)
      40年〜44年 石見現鉱床、五十猛、静間、大屋、延里、松代(IP法)

3)化学探鉱 33年 石見、延里、松代鉱区内 主要部分(デチゾン法)

4)放射能探鉱 36年 石見鉱区内。主として鉱床周辺

5)坑外ボーリング 27年〜43年 石見地区 176孔 32,555m
         44年 延里、松代地区 9孔 1,290m

6)坑内ボーリング 39年〜45年 石見地区 26孔 2,207m
         45年 延里、松代地区 1孔 250m
         46年〜48年 延里坑 9孔 1,717m

7)坑道探鉱 31年〜45年 石見坑 6,286m
      46年〜48年 石見坑 1,812m
      44年〜45年 延里、松代坑 1,155m
      46年〜48年 延里坑 1,848m


6 採鉱

1)石見鉱山(黒鉱)

イ.採鉱法

 カット アンド フィル(主) 切羽サイズ 巾10m×長30m×高20〜30m

 リルストーピング(従) 切羽サイズ 幅3m×長さ15〜30m 高15m
 (部分的にスクエア セットの採用もあり得る)

 充填式採鉱を行う

ロ.使用機械

 さく岩機 TY-90ドリスター(カット アンド フィル、リルストーピングの長孔)
      (UD-80アップホールドリルにTY-90を駕乗)
      採鉱補助及び坑道掘進にTY-16レッグドリル使用

 積込機 T3Hハイダンプローダー TL2オートローダーで切羽積込
     特にT3Hは切羽での充填に威力を発揮
     坑道掘進は太空600型ローダー

ハ.運搬系統(一部工事中)

 (切羽)T3H、TL2ローダー → 鉱車(0.9t) 2t、3tBa水平運搬 → 斜坑底 オアービン → チェーンフィーダー(リモコン) 鉱車に積込(1.5tグランビー) 斜坑巻上 → (グランビーブリッジ)坑外 オアービン

二.充填
 坑外で採土し、坑内に鉱車で逆送し切羽に投入。

ホ.能率(49年度予算)
 採鉱 6.9t/工
 切羽工程 5.3t/工
 総合工程 2.4t/工(坑内)

石見鉱山図版
石見鉱山図版
石見鉱山図版

2)延里鉱山(石こう)

イ.採鉱法
 カット アンド フィル 切羽サイズ 巾3.5m×長25m〜30m×高10m〜20m

ロ.使用機械
 さく岩機 レッグ式エアーオーガ
 積込機 切羽内及び主要運搬にダブルチェーンコンベアー
     30HP、20HP、5HP スクレーパー

ハ.運搬系統
 (切羽)ダブルチェーンコンベアー、スクレーパー、ベルトコンベアー、ビニールトラフ
   ↓
 ダブルC.C  斜鉱底 オアービン    ↓  チェーンフィーダー(リモコン) 鉱車に積込    ↓ 斜坑巻上  坑外 オアービン

二.充填
 坑外で採土しブルドーザで充填坑井口まで運搬
 坑井に直投し、充填坑道レベルにおいてはダンプトラック(2t積)で各切羽に配給する。

ホ.能率(49年度予算)
 採掘 15.0t/工
 切羽工程 7.0t/工
 総合工程 5.3t/工(坑内)

石見鉱山図版
石見鉱山図版

7 選鉱

1)石見黒鉱

イ.粗鉱は全量破砕摩鉱して浮遊選鉱法により選鉱し、銅精鉱、混合精鉱及び亜鉛精鉱の製品を得る。

ロ.破砕
 24”×15”及び20”×10”ブレーキクラブレヤー 3’コーンクラッシャー
 -18m/mサイズを摩鉱供鉱サイズとする。

ハ.摩鉱
 7’×3’、及び 5’×26’の2台のコニカルボールミルスパイラル分級機及び6”サイクロンを併用。
 -200メッシュ55%に摩鉱

二.浮選
 フローシートに示す如く混合精鉱を採り、これより銅精鉱を分離。
 混合尾鉱より亜鉛精鉱を採る。

ホ.精鉱処理
 デイスクフィルターにて脱水製品別貯鉱舎に

ヘ.尾鉱処理
 選鉱廃さいは石灰混入によりpHコントロールをした後、ポンプで堆積場へ圧送する。

ト.堆積場管理・排水管理
 廃さいはサイクロンを経て粗粒分を築堤部に、微粒分をポンド側に仕分けて堆積される。
 現堆積場は平面的な形状であるが土質安定試験を経て設計構築されたものである。
 水分は盲溝及び上澄水暗渠により脱水され、総合沈殿池で清浄化の仕上げを行う。
 坑内水の選鉱用に供給した残余は同じく総合沈殿池に導き処理される。総合沈殿池の上澄水をポンプで圧送し、日本海に放流する。
 以上の処置により、近傍を流れる野田川と鉱業活動とは全く隔絶され、全く問題は生じていない。

石見鉱山図版

2)延里石こう

 坑内から搬出された粗鉱は選鉱場にて破砕され夾雑物を取除き製品とされ、品位別に貯鉱舎に入れる。

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