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大田の地形と地質

■石見銀山大森町で使われた石材〜赤波石

大田市久利町の赤波石産地地図

赤波石の産出地点。赤波石は大田市久利町で産した石の名称。


赤波石について

 大田市久利町では、1960年頃まで石材用の石が採石がされていました。この石は「赤波石」と呼ばれ、大田市内の土木建築材料に広く使われました。
石見銀山の鉱山町、大森町の社寺にも用いられたと伝わり、赤波石とみられる石が使われている建造物を幾つか確認できます。

 赤波石は、久利町赤波地区で採石された石で、岩石としては凝灰岩に分類される石です。1500〜1600万年前頃に日本海の海底で活動した火山の火山灰が堆積してできたものです。この時代は日本海が拡大し、日本列島が形成された大地殻変動の時期にあたります。日本海側地域を中心に、同時期に海底火山活動で形成された凝灰岩類が広く分布し、その分布域は「グリーンタフ(green tuff、緑色凝灰岩)地帯」と呼ばれます。赤波石もグリーンタフのグループに属します。

 赤波石の採石場は、赤波地区の山中に何ヶ所も残り、相当量を出荷していたことがうかがわれます。久利文化研究会(1985)によると、採石の歴史は江戸時代前半まで遡ることができ、明治時代には盛んに採石されていたようです。軟質で加工しやすいことから様々な形に加工して、大田市内を中心に、市外にも出荷されていたようです。
層位によって粒度がごく細粒な部分とやや粗い(粗粒砂程度)部分に分かれていたようで、前者は細かな細工を施す石製品、後者は石垣などの建築材に多用されました。採石時は薄緑色を帯び、空気にしばらく触れていると白色〜明灰色に、さらに風化すると黄白色を呈することが多いようです。

赤波石の使用例

 赤波石は、大森町の城上神社と井戸神社に使われたと伝わります。大森代官所跡の近くにある城上神社では、拝殿と末社の土台部分の石垣に赤波石とみられる石が使われています。また、旧井戸神社(現井戸さん広場)の石垣も同質の石で、赤波石が使われているようです。
 大森町は町並みの範囲も凝灰岩類(主に火山礫凝灰岩)の分布域で、採石した跡が各所に残ります。石垣での凝灰岩類の使われ方を観察すると、細かな加工を施し、見た目を重視したと推定される場所には赤波石とみられる石が使われていることが多く、上記の神社のほかに大森町最大の町屋である熊谷家住宅の塀の土台などにこの石が使われています。風化が著しい石では見分けがつきにくいものの、一般的な家屋の建材には地区内の火山礫凝灰岩が使われている事例が多いようです。
 なお、現在の大森町では、修景用に大田市温泉津町産の「福光石」が多く使われていますが、近代以前の建造物では福光石の使用例は少なく、赤波石と地場産の石が主流です。

 赤波地区では、各所に赤波石が使われていて、目に付くものでは石垣が主流です。地区内を通る市道の脇にある大日如来像は転石から祠と仏像を削り出して作成したもので、粒子が細かく均質で加工に適した岩石であることを物語っています。
 大田市の市街地、大田町内では、一般家屋の土台石に赤波石とみられる石が使われている事例があるほか、喜多八幡宮では階段や石垣に同質の石が用いられています。三瓶川を渡る山陰本線の鉄橋橋脚にもこの石が用いられています。なお、長久町稲用でも白色凝灰岩を採石した比較的大きな石切場の跡が残っており、これも近隣にある程度流通したと推定されるため、石材産地の推定には慎重な判断が必要です。

久利町赤波地区の風景

赤波地区の風景。狭い谷に水田が広がり、両側に丘陵が迫っている。かつては、この丘陵の谷筋ごとに石切場があった。


赤波石

赤波地区の市道脇に露出した凝灰岩。市道のレベルの石は写真のように目が粗く、採石場跡は丘陵を少し登った場所にある。


赤波石

道路脇の転石の破断面。道路脇の露頭の石に比べて細粒で、石材として切り出した石の破片かも知れない。


赤波石

風化した転石。風化色はやや黄色味がかって見える場合がある。


赤波石

赤波地区の石塔に使われている石の風化面。苔や地衣類に覆われているが、岩の色は白い。


赤波石

赤波石の石切場跡のひとつ。切羽の高さは10mを超える。


赤波石

上写真の石切場跡の転石。細粒な白色凝灰岩。


赤波石

赤波石の石切場のひとつ。ノミ痕が残っている。床部分には採石したくず石が散らばっている。


赤波石

上写真の石切場の岩肌。平行葉理が発達している。葉理に沿って長い石を切り出し、土台石などに用いた。


赤波石

赤波地区の市道脇にある大日如来像。大きな転石を彫り出して作ってある。


赤波石

大日如来像の一部。細かな細工が施されており、石のきめの細かさを物語っている。


赤波石

赤波地区の石垣。


赤波石

赤波地区の石垣。1960年頃、最後に切り出した石で作られたものという。


城上神社

大森町の城上神社拝殿。この建物の土台部分に赤波石とみられる石が使われている。


城上神社

城上神社拝殿の土台石拡大。岩相が赤波石と共通しており、伝承のとおり赤波石を用いているとみられる。


赤波石

旧井戸神社の石垣。城上神社に比べるとやや作りが雑な印象を受けるが、岩質は同じもの。


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