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■江の川の塩水くさび

塩水くさびのイメージ

江の川の塩水くさびのイメージ


江の川の下流域では、川の流れの下に海水が入り込む「塩水くさび」という現象が発達します。
海水は、河口から何キロメートルも上流までさかのぼり、その海水の上を川の水が滑るように流れています。
江の川の独特の地形と、干満の少ない日本海の特性から生まれる現象です。


塩水くさびが形成される原因のひとつに、「淡水と海水の混じりにくさ」があります。
淡水と海水を一緒にするとすぐに混じり合うような気がしますが、そっと注いだ状態では意外なほど混じりあいません。
混じらないのは、淡水と海水の密度の違いのためです。1リットルが1キログラムの淡水に対し、海水は1リットルが約1.02キログラムあります。
わずかな違いのように思いますが、この差のおかげで両者はなかなか混じりません。
淡水の入ったコップに、色をつけた海水をストローを使ってそっと入れると、海水が下にたまって、2層構造になる様子が観察できます。
この簡単な実験と同じ現象が、江の川の塩水くさびの仕組みです。


江の川の下流では、重い海水が淡水の下に潜り込み、その境目はとてもはっきりしています。このような境目は「塩分躍層」と呼ばれます。
淡水と海水が出会う河口部では、どの川でも大なり小なり同じ現象が常に起きています。
その中で、江の川の塩水くさびは全国的にも珍しいくらいはっきりしていて、規模が大きなものです。
その理由のひとつは、江の川の下流は河口から10キロメートルくらい上流まで、川底の高さが海面より低いからです。
江の川は、河口まで両側に山が迫っていて、谷が直接海につながったような地形です。そのため、川の規模の割に川幅が狭く、大水の時にも広がって流れることができません。
そのため、川底が深く削られていて、海面より低い部分が多いのです。
海水がさかのぼることができるのは、海面より低い部分だけですので、この部分が多いほど、海水が入り込めるというわけです。
江の川ほどの規模があり、しかも河口が狭い川はとても珍しいものです。


また、日本海は潮の満ち干の差が小さいことが、塩水くさびが安定していることと関係しています。
江の川の河口部では、1日の干満の差は30センチメートル程度です。
太平洋側や瀬戸内海では、その差が2メートル以上にもなり、遠浅の海では満潮時と干潮時では海岸線の位置が大きく変化します。
もし、江の川河口で潮位が2メートルも下がると、海水は沖へ逃げて、川の中からなくなります。満潮時には塩水くさびができますが、干潮時にはなくなってしまうのです。


江の川では、河口からかなり上で海の魚がとれることがあるそうです。
さかのぼった海水の中を泳いで、川をさかのぼっていくのでしょう。
川の水がゆったりと流れている江の川ですが、その水の下には「海」が入り込んだ「汽水域」なのです。

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