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出前授業資料

■大地を揺るがす地震〜2016年波根町文化祭用資料〜

これは波根町文化祭のパネル展示用に作成した資料です。2018年島根県西部(大田)地震発生以前に作成したため、この地震の情報は含まれていません。

大地は動いている

地球の内部は、中心部では6000℃にも達する高い熱を持っています。この熱は大地を動かす原動力です。熱によって地球内部のマントルはゆっくりと動き、地球表面を作っている硬い岩石の層(プレート)はその流れとともにゆっくりと動いています。この動きが地震と火山の噴火を引き起こします。

日本列島付近では、大陸プレート(ユーラシアプレート、北米プレート)と海洋プレート(太平洋プレート、フィリピン海プレート)が互いにぶつかり合い、海洋プレートは大陸プレートの下にもぐり込んでいます。ぶつかり合う力によって、プレートの境界では時折巨大な地震(プレート境界型地震)が発生します。大陸プレートはぶつかる力によって所々で破壊が起こり、内陸型地震が起こります。地震とは大地が壊れた時の衝撃です。また、プレートの動きはマグマを生成し、火山噴火を引き起こします。

地球内部のイメージ図

地球内部のイメージ図

地震の恐ろしさ

地震の揺れは岩盤を伝って広がりさまざまな被害を引き起こします。構造物の破壊、斜面の崩壊などに加えて、軟弱地盤では地盤の液状化現象が大きな影響を及ぼします。液状化現象とは、地下水をたっぷり含んだ砂や砂礫の柔らかな地層が揺れによって瞬間的に液体のように流動化する現象です。これによって地盤が変形し、被害をもたらします。

海域で地震が発生した場合には津波を引き起こすことがあります。海底の上下運動が海水を動かすことで起こる長周期の波が津波です。津波は岸に近づくと増幅されて波高が高くなり、海岸のさまざまなものを押し流してしまいます。2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)では、巨大津波が三陸海岸を襲い、甚大な被害をもたらしたことは記憶に新しいところです。

鳥取県西部地震の被害状況

2000年鳥取県西部地震の被害状況。被害が大きかった境港の港湾施設。

鳥取県西部地震の被害状況

2000年鳥取県西部地震の被害状況。落石で押しつぶされた自動車。

鳥取県西部地震の被害状況

2000年鳥取県西部地震の被害状況。液状化現象による噴砂の噴出孔と堆積した砂。

鳥取県西部地震の被害状況

2000年鳥取県西部地震の被害状況。地割れが発生した中海大海崎堤防。

島根県の地震被害

島根県は過去の地震被害が少ない地域です。巨大地震の震源域となるプレート境界から離れており、内陸型の地震も少ない傾向にあります。しかし、日本列島のどこでも大地震が発生する可能性があり、過去の被害の少なさが明日の安全を保障するものではありません。

過去の地震被害をみると、記録上最も多くの被害をもたらしたのは1872年の浜田地震(M7.1)でした。死者550人を超える被害が発生し、大田市でも多くの被害がありました。近年では、県境近くで発生した2000年鳥取県西部地震で家屋倒壊等の被害が発生しています。南海トラフで発生する巨大地震の場合、震源は遠いものの被害を受ける可能性が高く、1946年の昭和南海地震は県内でも浜田地震に次ぐ被害が発生しています。

島根県内と隣接地で発生した主な地震

島根県内と隣接地で発生した主な地震(2016年作成資料のため、2018年島根県西部(大田)地震を含みません。

島根県の主な地震被害

島根県の主な地震被害(2016年作成資料のため、2018年島根県西部(大田)地震を含みません。

迫る南海地震

太平洋の海底をつくる「太平洋プレート」と「フィリピン海プレート」の沈み込み部分では、ほぼ一定の周期で 巨大地震が発生します。2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)は、このプレート境界型の巨大地震です 。西日本では四国から紀伊半島沖の沈み込み部分(南海トラフ)で発生するマグニチュード8超の巨大地震が100 年余の周期で発生しており、そのたびに甚大な被害をもたらしています。過去には、四国沖と紀伊半島東海沖を震源とする地震が連動、あるいはごく短い間隔で連続して発生しており、被害をより大きくしています。

昭和南海地震(1946年)からすでに70年が経過しており、2050年前後にはほぼ確実に次の巨大地震が発生すると見込まれます。東北地方太平洋沖地震で生じた地盤のひずみが、南海地震の発生時期を早めるという説もあり油断は禁物です。

プレート境界型地震発生のイメージ

プレート境界型地震発生のイメージ

記録に残る南海地震・東海地震

記録に残る南海地震・東海地震

島根県の活断層

断層は地震の際に地盤が破壊された「傷跡」です。断層は地震の結果であって原因ではありませんが、同じ断層に沿って幾度も地震が発生することがしばしばあり、比較的新しい時代に動いた断層は“活断層”として防災の面で注意されています。

断層の定義はおおむね過去数10万年間(160万年間とする場合もある)に動いたものとされています。 島根県でも活断層がいくつか知られており、そのうち、松江市北部を東西に横切る宍道断層はかなり新しい時代まで繰り返し動いたことがわかっている断層です。

下図は、島根県が地震被害を想定するために設定した地震発生域で、大田市の陸域では大森-三子山断層が想定の対象とされています。

防災面で、活断層に注意が必要なことは確かですが、それまで知られていない断層で地震が発生したり、断層がない場所で新たに地震が発生する場合もあるので、活断層が存在しない場所が安全という意味ではありません。

地震が想定された断層

島根県地震被害想定調査報告書(島根県、2012)で地震が想定された断層。過去の主な地震の位置を重ねて作成。

発掘調査で確認された宍道断層(破線)

発掘調査で確認された宍道断層(破線)。

地形に現れた断層

地震による隆起、沈降は長い時間をかけて山脈を作るなど、地形を変えていきます。比較的新しい時代に動いた断層は、地形からその存在を知ることができる場合があります。断層は直線的な地形を作る場合が多く、連続性が良い直線地形は比較的新しい時代の断層が存在する可能性が高い場所です。このような地形は「リニアメント」と呼ばれ、断層を探す手がかりになります。

空中写真を見ると、日本列島には多数のリニアメントがあり、中国山地では南西ー北東方向へのリニアメントが多く認められます。大田市にもいくつかの明瞭なリニアメントがあり、下図は大田市南西部の大森-三子山断層にともなうものです。ここでは、北東から南西に直線的な地形が連続しています。この断層は長さ10kmを超え、西は江の川付近まで続きます。

断層調査では、このような直線的地形や規則的に並ぶS字型の谷など変形に伴うと見られる地形を探すことから始まります。現地の地質分布の調査などを行い、活断層の可能性が高い地点では必要に応じて掘削を行い、断層を直接観察する場合もあります。

大森町南方(左)のリニアメント

大森町南方(左)のリニアメント。2つの三角の間の谷が、北東-南西方向にほぼ一直線に伸びており、中国山地の主要な断層の方向と平行する。

地盤とゆれ

地盤の強度は地震の被害を左右する要素です。地盤が固い岩盤でできている場所は被害が少なく、軟弱地盤では被害が大きくなります。岩盤の強度によって揺れの大きさを表す震度(0〜7)は最大で1.5の差が出るとされます。

過去1万年間に堆積した砂や泥、礫の地層でできている沖積平野は軟弱地盤に相当し、揺れが大きくなります。また、液状化現象が起きる可能性が高いのも軟弱地盤で、地震に対して弱い地盤です。ともにマグニチュード7.3で地震の規模がほぼ同じ兵庫県南部地震(1995年)と鳥取県西部地震(2000年)では被害に大きな違いがありました。周辺人口の違いもありますが、強固な花崗岩地帯が震源だった鳥取県西部地震は揺れや地盤の変形が小さく、被害が少なかった要因と考えられています。

平成28年4月16日発生の熊本地震(M7.1)で、周辺より高めの震度が観測された地点。

平成28年4月16日発生の熊本地震(M7.1)で、周辺より高めの震度が観測された地点。
有明湾に面した佐賀平野(沖積平野)で周囲より震度が高めに出ている傾向がわかる。また、軟弱地盤がある徳佐盆地(山口県)や出雲平野西部の神戸川河口付近で、周囲より強い揺れが観測されている。

地震を表す単位

地震の時、「震度」と「マグニチュード(M)」のふたつの数字が発表されます。震度は場所ごとの揺れの大きさを表すもので、日本では震度0から7までに区分されています。震度5と6は「強」と「弱」に細分されており、全体では10段階です。震度が場所によって異なることに対し、マグニチュードは地震の規模そのものを表す単位です。マグニチュードには値の求め方によって数種類がありますが、日本で最も一般的に使われているのは気象庁の基準によるものです。

マグニチュードは対数で表されるため、値が1違うと地震の規模は約30倍の差になります。これまで観測された最大の地震は1960年チリ地震でM9.5、地球上で起こり得る最大の地震はM10とされています。

地震の規模と発生確率

地震の規模と発生確率
規模が大きな地震は発生確率が低く、小さなものは確率が高い。両者は相関関係にある。例えば、M8の地震は地球上で年に1回の発生確率、M1.5の地震は年に1000000回程度発生している。

地震と火山

地震と火山噴火の関係は複雑です。地震の多くはプレートの動きによって発生します。火山もプレートの動きに関係するものが多く、いずれもプレート境界付近に集中しています。一方で、マグマの動きによって起きる火山性地震を別にして、地震と火山噴火は直接の関係はないと言って良いでしょう。しかし、地震が火山噴火を誘発したとみられる事例もあり、切っても切れない関係です。

東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の後、日本列島の火山活動が活発化したと言われています。地震による地盤の変形がマグマが動く「きっかけ」になることが原因と考えられています。マグマは動かない場合でも、地震によって地下水の経路が変わり、マグマと地下水が接することで水蒸気噴火を起こすこともあります。 火山性地震の観測はマグマの動きを知る上で有効です。マグマが動く時には周辺の岩盤の破壊が起こり、火山性地震が発生します。これを観測することで、火山の活動性をある程度把握することができます。

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