久代町の浄土寺にある石碑。紫灰色の安山岩。
浄土寺の石碑の拡大。
同上。空隙部分。
浄土寺。周囲の地蔵は緑色火山礫凝灰岩(福光石)。
上府町の安国寺。最も古い宝篋印塔の石材。紫灰色の安山岩。
上写真の石製品。宝篋印塔相輪部の底部
益田兼高の先祖の墓とされる3基の石塔。灰色の安山岩。
上の石塔の拡大。
同上
石塔の一部を交換した部材。白色凝灰岩。
益田氏の先祖の墓とされる3基と古い(14世紀?)宝篋印塔。
浜田地震の慰霊塔。砂岩。
浅井町の地蔵堂。様々なものが混在。
玄武岩製の石碑。
白色凝灰岩の一石五輪塔。
浜田市には石碑が多い(石見では最多?)。その石材は、安山岩が多くを占め、玄武岩または玄武岩質安山岩が混じる。ほかに、流紋岩が少量ある。
石碑に使われている安山岩は、紫灰色で斜長石の斑晶が目立つ。斑晶は1mm程度までの比較的細かいものが多い。同様の石材で作られた宝篋印塔(安国寺の宝篋印塔など)もある。この石材は、福井県の「日引石(ひびきいし)」とされている。
石碑で他に使われている石材では、灰色の斑晶が目立たない安山岩、玄武岩または玄武岩質安山岩、流紋岩がある。灰色の安山岩も石塔などに使われており、これも石製品の形式的な分類から「日引石製」とされている。玄武岩または玄武岩質安山岩は黒色で緻密なものと、ドレライト様の結晶質のものがある。流紋岩は結晶が目立ち貫入岩的な岩質のものが使われている。
「日引石」は、福井県高浜町日引で産出した石材。以前は多量に出荷していたらしく、日本海沿岸各地にこの石を用いた石製品が分布しているという研究がある。
この石材の岩種は、石造物研究の分野では「安山岩質凝灰岩」とされているようである。
これまで、浜田市の石製品を含め「日引石」と言われているものをいくつか見たが、外見上は安山岩(溶岩)に見える。産地である日引付近は、地質図では海岸部は流紋岩質火砕岩、その上位に変質安山岩および凝灰角礫岩、その上位には紫蘇輝石普通輝石安山岩が分布するとされている。空中写真等で確認すると、石切場跡は変質安山岩および凝灰角礫岩、紫蘇輝石普通輝石安山岩の分布域に多数存在するようである。地質調査所発行の地質図の記載からは、「日引石」と言われている石が安山岩であっても矛盾はせず、少なくとも凝灰角礫岩ではない。
空中写真からも石切場跡が多数認められる状況からみて、使える石は切り出して使ったと思われ、岩種的には異なる石もすべて「日引石」と呼ばれた可能性がある。他の石材産地でも同様の事例があるので、安山岩の日引石と凝灰岩の日引石が混在しているのかも知れない。
また、「日引石」と呼ばれる石のうち、紫灰色のものは岩中の小さな空隙に白色の二次生成鉱物(方解石または沸石か?)が形成されていることがあり、これが緑色を呈する場合もある。この特徴は、岩石が熱水変質を受けていることを示しており、地質図の記載の変質安山岩がこれにあたるものと思われる。