タイトルバナー

大田の地形と地質

地層観察の手引き

■1.三瓶山の自然史(1)〜火山噴火で生まれた山〜

1)三瓶山の概要

 三瓶山は島根県の中央部に位置する。日本海の海岸からは直線距離で約15kmと近い距離にあり、山陰山陽の境をなす中国山地脊梁からは北に離れた独立峰である。
三瓶山は火山であり、中国山地の隆起とは直接的な関係がなく、火山噴火によって山体が形成されたことが、その立地と関わり深い。

 三瓶山の峰は主峰の男三瓶山(1126m)をはじめ、子三瓶山(961m)、女三瓶山(953m)、孫三瓶山(903m)、太平山(854m)が室ノ内と呼ばれるくぼ地を囲んで環状に配列している。環状列の南には日影山(697m)と無名のピーク(718m)が並び、男三瓶山の北には天上原の名称があるテラス状の小ピークが張り出している。テラス状の地形は、男三瓶山の西にもあり、机ケ背の名称がある。男三瓶山、子三瓶山、女三瓶山、孫三瓶山、日影山および無名のピークは、デイサイト溶岩(*1)からなる溶岩円頂丘である。太平山は火砕物が堆積して形成された火山砕屑丘(*2)とされている。
峰々の外側は、帽子のつば状に緩斜面が取り囲み、西の原、東の原、北の原(長者ケ原など)と呼ばれる。緩斜面の外側は標高400〜500mのピークが連なる低山帯で、火山としての三瓶山の基盤にあたる岩石(*3)が分類している。すなわち、三瓶山の火山地形は緩斜面部分までで、その範囲は直径約5kmの円形である。この部分は古期の火山活動で形成されたカルデラ(*4)で、現山体はカルデラ内に形成された中央火口丘群という言い方もできる。

 三瓶山は過去約10万年間に複数回の活動を行った火山で、最新の活動は約4000年前である。気象庁による区分(*5)で活火山に指定されている。


三瓶山地図

図1-1 三瓶山の地形(国土地理院発行地勢図を使用)


*1 デイサイト:火山岩の一種。4)三瓶火山の噴出物と火山岩について で詳しく述べる。

*2 火山砕屑丘:火口付近に軽石、火山礫、火山灰が堆積してできた高まり。

*3 基盤にあたる岩石:三瓶火山噴出物の下には、古第三紀の花崗岩類、新第三紀の火山岩類が分布している。

*4 カルデラ:直径2kmを超える噴火口をカルデラと呼ぶ。室ノ内は直径2km未満のため、カルデラとは呼ばない。

*5 気象庁による区分:概ね1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と定義されている。現在、全国で110ヶ所。


2)火山の基礎

 マグマ(*1)が溶岩として地表に噴出したり、火砕物(*2)が噴出してできた地形を火山と呼ぶ。火山活動時には溶岩と火砕物だけでなく、マグマに由来する水蒸気や硫化水素、二酸化炭素などのガス成分も噴出される。

 マグマは、地下深部で岩石、特にマントルを構成するカンラン岩が融解して生成されると考えられている。マグマが生成される場所は、中央海嶺のマントル湧昇部と、プレートの沈み込み帯、ホットスポット(*3)に大別される。

 日本列島はプレートの縁辺部にあり、日本列島の火山は基本的に海洋プレートの沈み込みに関係している。日本列島の地下深部には海洋プレートが沈み込んでいる。これが地下100km以深の深さまで沈むとその温度は千数百度に達する。この時、プレートは個体の岩石だが、岩石中の水がマントル中に放出されると部分的な溶解が生じマグマが生成される。この時の温度は1300℃以上とされる。

 日本列島の火山の多くは列状の分布(*4)を示す。プレートの沈み込みによりマグマが生成される深度の等深線がこの列に一致する。本州、九州、北海道の火山分布を見ると、火山列を境に大陸側には火山が存在するが、太平洋側には火山が存在しない。太平洋側は沈み込んだプレートが、マグマが生成される深度まで達していないため、火山が形成されない。このように、火山が出現する境界線は火山フロント(前線)と呼ばれる。


活火山の分布と火山フロント

図1-2 活火山の分布と火山フロント


プレートとマグマ生成のイメージ

図1-3 日本列島周辺のプレートの動きとマグマ生成のイメージ


*1 マグマ:地下にある、岩石が溶融してできた液体。岩石成分と水などの揮発性成分が混合した液体。地表に噴出したものは溶岩と呼ばれる。

*2 火砕物:固結したマグマが砕けた土砂状の物質。火山礫や軽石、火山灰。

*3 マントルの対流と関係なく、定点で火山活動を生じる場所。ハワイ火山がこれにあたる。

*4 列状の分布:以前は「火山帯」と表現したが、現在はほとんど使われなくなっている。


3)火山噴火のメカニズム

 地下深部で生成されたマグマが地表まで上昇し、噴出する現象が火山噴火である。休止期を挟んで間欠的に噴火する火山が多いが、1度だけ噴火して活動を終える火山もある。桜島火山(*1)や阿蘇火山のように頻繁に噴火を繰り返す火山もある。

 マグマが上昇し噴出する主な原動力は、気体成分の泡立ちによる膨張、圧力上昇と考えられている。地下深部でマグマが溜まってくると、周囲の岩石よりも軽いために浮力が働き上昇しようとする力が生まれる。

 マグマ中には水蒸気や二酸化炭素、硫化水素などの気体成分が多量に含まれていて、地下深部の高温高圧条件ではそれらはマグマ中に溶けている。しかし、マグマが上昇を始めて、外圧と温度が低下すると溶け込んでいられなくなった気体成分が泡立ち、マグマが膨張する。膨張することで内圧が高まるとともに、周囲の岩石との密度差が大きくなり(=相対的に軽くなり)、上昇しようとする力が強まり、上昇速度が加速される。

 マグマが上昇する経路は、断層による割れ目など、岩盤の弱い部分である。上昇速度が速くなると、泡立ちが加速度的に生じてさらに加速させる。一方、上昇速度が遅いと泡立ちが少なく、気体がゆっくり放出されることで内圧が低下し、マグマが地表に達することなく停止することもある。

 地表直下に達したマグマが沸騰するように激しく泡立つと、爆発的な噴火によって一気に放出され、大噴火を引き起こす。地下のマグマの圧力によって火口から溶岩が押し出されるように出てくる噴火、マグマ本体は火口深部にあり、水蒸気などの気体だけを放出する場合、マグマと地表付近の水が接触することで生じる水蒸気爆発(*2)など、噴火の形態は様々である。


マグマの泡立ちによる火山噴火のイメージ

図1-4 マグマの泡立ちによる火山噴火のイメージ


*1 桜島火山:鹿児島県の錦江湾を作る姶良カルデラの中にある火山(中央火口丘)。極めて活発に噴火を繰り返す、世界でも有数の活動的な火山。

*2 水蒸気爆発:地下水や地表水がマグマと接触し、急激に気化することで生じる爆発。


4)三瓶火山の噴出物と火山岩について

 マグマが地表に噴出したものは溶岩と呼ばれ、溶岩が固結してできた岩石は火山岩と呼ばれる。ただし、固結した岩石についても、成因で分類する場合は固結した溶岩をそのまま溶岩と呼び、成分で分類する場合は火山岩の名称で呼ぶ場合がある。つまり、同じ岩石を表現の意図によって溶岩と呼んだり、岩石名で呼んだりすることがある。

 火山岩の区分は、その主要成分のひとつ、二酸化ケイ素(SiO2(*1)の多少によって区分される。二酸化ケイ素が多い方から、流紋岩、デイサイト、安山岩、玄武岩、超塩基性岩に区分され、例えばその量が63%より多ければデイサイト、少なければ安山岩といったように、成分の多少によって機械的に分けられる。

 SiO2の多少は、粘性が高い、低い、といったマグマや溶岩の性質に関係が深く、その多少によって溶岩の流動性や、噴火の様式に直接的に関係する。SiO2が多いマグマは粘り気が強く流れにくい。少ないマグマは粘り気が小さく流れやすい。具体的には、ハワイのキラウエア火山の溶岩は粘り気が小さいため、溶岩流が川のように流れるが、三瓶山の溶岩はSiO2が多く、溶岩は余り流れず火口付近に小高い溶岩ドーム(*2)を形成する。

 三瓶火山の噴出物は、第1活動期は流紋岩質、第2活動期以後はデイサイト質である。現山体は、デイサイト溶岩と火砕物からなる溶岩円頂丘(鐘状火山、トロイデ火山)の集まりで構成されている。三瓶火山のデイサイトは、鉱物として斜長石、黒雲母、角閃石、磁鉄鉱を多く含む。鉱物の粒子間を埋める「石基」(*3)と呼ばれる部分は、灰〜赤灰色を示す。色味の違いは、含まれる鉄分の酸化状態によるもので、温度が高い溶岩が地表近くで酸素に触れると「高温酸化」と呼ばれる現象によって赤みを帯びるようになる。


火山岩の区分と火山地形

図1-5 火山岩の区分と火山地形


*1 二酸化ケイ素:岩石の最も主要な成分で、地殻を作る物質のおよそ60%が二酸化ケイ素。様々な鉱物に含まれる。石英(水晶)や玉髄(メノウ、碧玉)は二酸化ケイ素からなる鉱物。

*2 溶岩ドーム:粘性が高い溶岩によってできる小高い山体。溶岩円頂丘と溶岩ドームは同義だが、ここでは便宜的に火口付近にできる小規模なものを溶岩ドーム、その積み重ねによって大規模に発達したものを溶岩円頂丘と呼び分ける。

*3 石基:火山岩は多くの場合、火山ガラスや微小な鉱物結晶からなる部分と、肉眼で識別可能な大きさの鉱物結晶からなる。前者を石基、後者の鉱物結晶を斑晶と呼ぶ。火山ガラスとは、マグマが急冷されることで、結晶化が進む前に固結したもの。

inserted by FC2 system