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しまねの自然スポット

出雲地方・隠岐地方

■大根島(松江市)

大根島

 湖沼として全国で5番目の広さを持つ中海に浮かぶ大根島は、約20万年前に活動した低平な火山です。粘性が低い玄武岩溶岩が噴出し、溶岩流が四方へ流れたことでこのような地形ができました。火山の島ですが、活動時には陸上で噴火したと考えられており、中海湖底の広い範囲に溶岩が続いていることがわかっています。島の中央付近には小高い丘(大塚山)があり、これは小規模な爆発的噴火によって火口から放出されたスコリア(発泡した溶岩片で色が濃いもの)が堆積してできたスコリア丘です。

 粘性が低い溶岩は、この島に珍しい地形を残しました。2ヶ所開口している溶岩隧道(溶岩トンネル)がそれで、第一溶岩隧道は特別天然記念物、第二溶岩隧道は国指定天然記念物に指定されています(第二溶岩隧道は工事で掘削したことで開口)。

 溶岩トンネルは、粘性が低い溶岩(玄武岩質溶岩)が溶岩流として流れた時、表面が固まった後で内部の固まっていない溶岩が抜け出すように流れ去ることで残される空洞です。国内では大根島と富士山、対馬など限られた場所でしか見ることができない珍しい火山地形です。大根島では、開口している2穴の他にも地下にも空洞が存在していることが、江島大橋建設時のボーリングなどからわかっています。

 大根島の溶岩隧道では幻の洞窟性の魚、ドウクツミミズハゼが報告されていますが、近年は確認されていません。

溶岩隧道

第一溶岩隧道の入り口。現在は立ち入りできません。

 大根島は日本一のボタン(牡丹)の産地として知られます。4月から5月中旬の花期には島の各所で大輪の花が咲き誇る様を見ることができます。

 ボタン栽培は大根島の土壌の特性を利用したものです。大根島の溶岩はガスが抜けた穴が多数空いており、水が通り抜けやすい(浸透性が高い)岩盤です。その上に三瓶山と大山の火山灰が厚く積もり、これも大変水はけが良い土質です。島全体が水はけが良いために地表には水が少なく、湧き水も中海の湖岸部分の数カ所にあるだけです。一般的な農作物を作るには地表の水が少なかったものの、水はけが良い土質はボタンの栽培に適していたことから、島の特産品になりました。

 薬用人参も大根島の特産品で、これも火山灰質の土壌が栽培に向いていました。薬用人参は江戸時代に松江藩が栽培を推奨した歴史があります。松江藩は三瓶山の山麓でも栽培を試みており、火山灰土壌が栽培に向いていたことを把握した上での施策だったことがうかがわれます。

大根島の牡丹

4月下旬から5月上旬にボタンが花の盛りを迎えます。

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