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しまねの自然スポット

出雲地方・隠岐地方

■神西の岩坪(出雲市)

神西の岩坪

 神西の岩坪は、出雲市神西町を流れる十間川水系岩坪川の河床にある甌穴群です。岩坪の周囲の河床は平坦で滑らかな岩盤です。「出雲国風土記」では神西町一帯は「滑磐石哉(滑らかな岩である)」ことから「滑狭郷」という地名になったとされ、岩坪周辺がこの岩だと言われています。
また、岩坪には甌穴の砂を掘り出して雨乞い神事を行う風習が伝わり、伝承や信仰の対象として地域で大切に守られています。

 岩坪付近の平滑な岩盤に大小5穴の甌穴があり、大きなものは長径約2.5m、深さ約1.4mに達します。滑らかな岩盤に大型の甌穴が並ぶ様子は独特で、目をひきます。自然地形が地域の歴史文化と関わりを持つことが評価されて、出雲市の天然記念物に指定されています。

 甌穴は水流による浸食作用で形成される微地形のひとつで、河川や海岸で認められます。岩盤のくぼみに入り込んだ砂礫が水流によって転がりながら、くぼみを削り広げることで穴が拡大して形成されます。島根県では、奥出雲町を流れる馬木川の渓谷「鬼の舌震」の甌穴群がよく知られています。

 岩坪の岩盤は、新第三紀中新世の礫岩層です。年代的には約1500万〜1300万年前頃の地層です。この礫層は、直径1〜10cm程度の硬質な火山岩の円礫〜角礫を含み、直径20cmを超えるものも含まれます。礫と礫の隙間を埋める細粒分は、地表である程度風化しており軟質で、もろく浸食されやすい状態です。そのことが甌穴の拡大を促したと考えられます。

 岩坪川は平常時の流量が少なく、平滑な河床の上を緩やかに流れる程度で、甌穴に流入する河川水はわずかのため、甌穴内の礫が動く機会は少ないと推定されます。それでいて大型の甌穴が形成されたのは、岩質が大きく関わっているのでしょう。

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