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しまねの自然スポット

石見地方

■上ヶ畑の石灰岩洞窟(邑南町)

上ヶ畑の石灰岩洞窟

広島県との県境、江の川の河岸にあたる邑南町上田の上ヶ畑地区には小規模な石灰岩層があり、昭和30年代頃まで鉱山として操業されていました。
ここには小規模な石灰岩洞窟があり、おそらく、同種の洞窟として人が入ることができる規模のものは島根県で唯一とみられます。
洞窟は江の川の河岸の道路から100mほど上方の石灰岩採掘場跡の端にあり、入り口は半ば埋もれかけているものの内部は立って歩くことができる高さのちょっとした広間状になっています。この部分は鉱山の操業時には作業場の一部として使われたらしく、洞窟を削岩機で広げた痕跡がみられますが、基本的には自然に形成された石灰岩洞窟です。
広間は50平米程度で、その先は細い洞窟が曲がりながら伸び、数10m続くようです。
洞窟内にはコウモリが生息しているほか、キツネの巣穴も観察できます。

石灰岩層は、古生代ペルム紀の地層に部分的に挟まれています。この地層は、海底の堆積層や火山噴出物が海底プレートの動きによってプレート境界付近に押し付けられて形成された「付加帯」と呼ばれるものです。
中国地方の山陽側に分布する付加帯の地層には秋吉石灰岩層を始めとする大規模な石灰岩層を伴っていますが、山陰側では付加帯の地層自体が少なく、石灰岩層の分布はごく限られます。島根県の石灰岩鉱山は上ヶ畑のほか津和野町日原で小規模に操業された程度です。
上ヶ畑の石灰岩は消石灰などに利用されたほか、美郷町にあった銅ヶ丸鉱山での製錬で「融剤(フラックス)」に用いられました。

上ヶ畑の石灰岩洞窟

洞窟の入り口部分

上ヶ畑の石灰岩洞窟

洞窟の内部には石灰岩の浸食構造が見られる。鐘乳石は発達していない。写真には洞窟内で休むコウモリが写っている。

上ヶ畑の石灰岩洞窟

石灰岩採掘跡の崖。この石灰岩層はマグマの熱を受けて若干結晶化している。結晶化が弱い部分では、まれに化石が含まれ、サンゴやウミユリが認められる。

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