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■仁万の珪化木

仁万の珪化木

写真1.南側(海食崖側)の珪化木

仁万の珪化木

写真2.北側(海食台上)の珪化木

 大田市仁摩町の田尻海岸に近い、の通称「白くずれ」に大型の樹木化石(珪化木)が2個体あり、島根県の天然記念物に指定されています。

 いずれも直径1mを優に越えるもので、一方は海食台(海岸で波の高さ付近の平坦な岩盤)の上に転石とともに露出し、もう一方は会食台の岩盤中に半ば埋もれた形です。

 海食台上にある南側の個体は樹木の根元付近とみられる形状で、幅が最も広い部分は2.5m以上に達します。この個体には割れ目が発達しており、その空洞には微小な石英(水晶)の結晶を見ることができます(写真3)。

仁万の珪化木に見られる石英の結晶

写真3.仁万の珪化木に見られる石英の結晶。ひとつひとつの結晶は1〜2mm程度の大きさ。

 珪化木の割れ目に見られる石英は、珪化木が木から石に変わる過程と関係があります。石英は、二酸化ケイ素(SiO2)を成分とする鉱物です。同じ成分の鉱物には玉ずい(メノウ、碧玉など)があり、オパールも二酸化ケイ素と水からなる鉱物です。

 珪化木は地層中に埋もれた樹木に二酸化ケイ素が溶け込んだ高温の水(熱水)が染み込み、樹木の内部を二酸化ケイ素の鉱物に置き換えることで石化したものです。この作用を「珪化作用」と言います。珪化木の成分は大部分がメノウやオパールになっており、空洞にはしばしば石英の結晶が発達しています。

 仁万の珪化木は、1500〜1600万年前に生じた火山活動によって樹木が火山灰の地層に埋没したものです。火山活動に引き続いて生じた熱水活動で珪化作用が生じて、樹木が石に変化しました。

 仁万の珪化木が形成された時代は、日本海が広がり日本列島が形成された地殻変動の時代で、広がりつつあった海底や海岸付近で火山活動が盛んでした。この火山活動で形成された岩石はしばしば緑色をしており、その岩石は緑色の凝灰岩(火山灰からなる岩石)の意味で「グリーンタフ」と呼ばれます。日本海の拡大に関係する火山噴出物の地層を総称してグリーンタフと呼ぶこともあります。

 仁万の珪化木の周辺では、鮮やかな緑色の凝灰岩や、凝灰岩が岩脈となって地層を貫いた泥岩脈など変化に富んだ地層を見ることができ、日本列島形成期の地殻変動の歴史を学ぶ絶好のフィールドとなっています。

「仁万の硅化木」の表記について

 珪化木の表記には「珪」と「硅」の場合があり、意味的には全く同じです。
古くは「硅」が比較的よく使われていたようですが、現在は「珪」が主流です。
天然記念物(県指定)の指定名称は「仁万の硅化木」となっており、日本遺産の構成文化財もこれにならって「硅」の文字を使っていますが、このページでは「珪」に統一しています。

物質名としては表記の混乱を避けるために「ケイ素」、「ケイ酸」とカタカナを用いることがあります。

仁万の珪化木案内図

仁万小学校付近から馬路へ抜ける市道沿いにある仁摩斎場脇から、山道を下って田尻海岸の浜に下り、岩場を5分ほど歩くと珪化木に到着します。
途中の岩場は、波打ち際を歩くため、長靴が安全です。波が高い時は通ることができません。

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